症例38:強化型単焦点レンズ(アイハンス)でマイクロモノビジョンとした症例

患者様の状態・ご要望

使用レンズ:単焦点

手術眼:両眼

今回は、強化型単焦点レンズ(アイハンス)を使用し、マイクロモノビジョンという方法で見え方の幅を広げる工夫を行った白内障手術の症例をご紹介させていただきます。

 

患者様は50代の方で、右眼が見えにくくなってきたことを自覚され、白内障手術をご希望とのことで、他院眼科から当院へご紹介いただきました。

 

もともと両眼とも近視があり、ハードコンタクトレンズを使用されていました。

お話を伺うと、コンタクトレンズの度数はあえて少し弱めに設定し、中間距離が楽に見えるように調整しているとのことでした。運転など遠くをしっかり見たい場面では、コンタクトレンズの上から眼鏡をかけて対応されていたそうです。

 

このように、患者様はすでにご自身の生活スタイルに合わせて、見え方のバランスを工夫されている状態でした。

視力データ

検査時期 遠見視力 近見視力
術前 R)0.04(0.8×S-8.00D)
L)0.1(1.2×S-4.25D C-1.00D Ax170°)
R)0.09(0.8×S-6.50D)
L)0.2(1.2×S-2.00D C-1.00D Ax170°)
術後 R)1.0(1.2×S-0.25D)
L)1.0(1.2×S-0.25D)
R)0.7(1.0×S+2.00D)
L)0.5(1.0×S+2.25D)

手術方針と結果

視力は

右遠見0.04(0.8) 右近見0.09(0.8) 左遠見0.1(1.2) 左近見0.2(1.2)※

【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】

 

患者様は両眼の白内障手術をご希望され、眼内レンズは単焦点レンズを希望されました。

「遠くを重視したいが、できれば近くも見えるとありがたい」

というご希望がありました。

 

この患者様は50代とお若くピント調節の力が残っていたこと、また元々近視であったことから、度数設定については慎重に検討しました。

 

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入します。すると、もともと持っていたピント調節の力が失われます。

そのため手術後は、設定した距離にピントが合う代わりに、それ以外の距離にはピントが合わなくなります。

(例えば、遠くが見えるようにすると、中間距離や手元にはピントが合わなくなります)

 

患者様は「できれば近くも見たい」と希望されていましたが、もし手元がしっかり見える設定にすると、裸眼では遠くや中間距離が見えなくなり、日常的に眼鏡が必要となります。

患者様は、現在のコンタクトレンズの見え方に慣れており、

「今より遠くの見え方が悪くなるのは困る」

というお気持ちもありました。

そこで、現在のコンタクトレンズと同じような中間距離重視の設定とする方針としました。

 

ただし、この患者様はもともと近視のため、中間距離を狙ったとしても、手術前と比べると近くが見えにくくなったと感じる可能性があります。

そこで、見える範囲を広げるためにマイクロモノビジョンという方法を取り入れました。

 

マイクロモノビジョンとは

・片眼をやや遠く寄り

・もう片眼をやや近く寄り

に設定することで、両眼で見たときに見える距離の幅を広げる方法です。

 

今回の症例では

・右眼:中間距離よりやや近く寄り

・左眼:中間距離よりやや遠く寄り

というバランスで度数を設定しました。

 

またレンズは、強化型単焦点レンズの「テクニス アイハンス(TECNIS Eyhance)」を選択しました。

 

テクニスアイハンスは、従来の単焦点眼内レンズと同等の遠方の見えやすさを維持しつつ、やや近く(中間距離)も見やすくなる工夫が施された強化型単焦点レンズです。

高次非球面設計によって、レンズ中心部の光学的パワーを緩やかに増加させることで、従来の単焦点眼内レンズよりもやや広い距離でピントが合いやすくなっています。

従来の単焦点眼内レンズと比較して、遠見視力とコントラスト感度を維持しながら良好な中間・近見視力が出ており、眼鏡が不要と感じた方の割合も多かったことが報告されています。

保険適用の単焦点眼内レンズという扱いのため、多焦点レンズより費用を抑えられます。

 

両眼の手術後の視力は

右遠見1.0(1.2) 右近見0.7(1.0) 左遠見1.0(1.2) 左近見0.5(1.0)

 

遠方視力は両眼とも非常に良好でした。さらに、当初の予想よりも近くの見え方も比較的良好でした。

 

この患者様はもともと近視だったため、手元を見るには老眼鏡が必要だろうと考えていました。しかし実際には、日常生活の多くの場面で裸眼でも問題なく過ごされているとのことでした。

もちろん、見え方の感じ方には個人差がありますが、今回の症例は、強化型単焦点レンズ(アイハンス)とマイクロモノビジョンの組み合わせがうまく機能した一例といえるかもしれません。

 

※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。

術前・術後比較

術前スリット

右眼
右眼
左眼
左眼

術後スリット(左眼なし)

右眼
右眼