多焦点眼内レンズ症例紹介

症例紹介

症例紹介

50代、趣味はドライブ、多焦点レンズ(クラレオンビビティ)

50代/趣味はドライブ・映画鑑賞

使用レンズ:右眼クラレオンビビティ(左眼は待機中)

視力データ

術前視力
遠見 R)0.15(0.6×S-0.25 C-2.25 Ax80°)
L)0.15(1.2×S-2.00)
近見 R)0.3(0.5×S+1.75 C-2.25 Ax80°)
L)0.8(1.2×S+0.25)
術後視力(右眼のみ)
遠見 1.2(better×S-0.50)
近見 1.2(better×S+0.50)

患者様の状態・ご要望

50代、趣味はドライブ・映画鑑賞。他院で両眼の白内障を指摘され、多焦点レンズのご希望で当院を受診されました。患者様は、裸眼で運転したい、できれば手元も40㎝位まで裸眼で見たいというご希望でした。

治療方針

そこで、まず弱点が少ない全距離型クラレオンパンオプティクスを提案させていただきました。しかし、お話を伺うと、夜間のライトによるハローグレア症状が心配、より鮮明さを重視したいとのことでしたので、2023年に国内販売開始された波面制御型クラレオンビビティに変更させていただきました。

クラレオンビビティは、クラレオンパンオプティクスと比較して鮮明度は高いとされています。しかし近見焦点距離はクラレオンパンオプティクスの約40cmに対しクラレオンビビティは約50㎝とやや遠方のため、近くの見え方はやや劣る可能性があります。患者様は、それぞれのレンズのメリットとデメリットを十分理解され、最終的にはクラレオンビビティを希望されました。右眼はほとんど乱視がありませんでしたのでクラレオンビビティとし、左眼は乱視がマイナス1.75ジオプターありましたので右眼の術後にレンズを決定する方針としました。尚、現時点でクラレオンビビティは乱視用が販売されておりません。

手術前の状態

患者様の術前視力は、右眼が裸眼0.15、矯正0.6、左眼が裸眼0.15、矯正1.0でした。両眼白内障の核硬化の進行はなく皮質混濁が主でした。

スリット検査画像
術前
術前の眼の状態
術後
術後の眼の状態

手術結果と考察

手術は予定通り終了し、術後の裸眼遠方視力1.2という良好な結果が得られました。一方、心配していました近見視力も1.2と良好で、患者様ご自身も「近くもはっきり見える」とおっしゃっていました。

クラレオンビビティの近方は+1.75から+2.0ジオプターと低加入度数のため、私としてもここまでの改善は想定外の結果でした。クラレオンビビティの使用初期に経験した症例でしたのでとても印象に残っています。術後、左眼のレンズ選定についてお話ししたところ、これだけ見えるのでクラレオンビビティの乱視用が発売されるまで待ちたいとお申し出がありましたので、今回は右眼だけの手術とし、しばらく経過観察させていただくこととなりました。

原発閉塞隅角症を伴う方への保険診療での多焦点レンズ治療

50代/糖尿病網膜症の検査目的で受診

使用レンズ:両眼レンティスコンフォート(マイクロモノビジョン法併用)

視力データ

術前視力
遠見 R)1.0(1.2×S-0.50D)
L)0.9(1.2×S-0.50D C-0.50D Ax75°)
近見 R)1.0(1.2×S+1.50D)
L)1.0(1.2×S+0.50D C-0.50D Ax75°)
術後視力
遠見 R)1.2(better×S-0.75D)
L)1.2(better×S-0.75D)
近見 R)1.0(1.2×S+0.50D)
L)1.2×(n.c.)

患者様の状態・ご要望

糖尿病網膜症の検査目的で受診された方です。診察時に原発閉塞隅角症を認めました。

(原発閉塞隅角症についてはこちらの記事をご覧ください。

糖尿病網膜症は、進行するにしたがって散瞳して眼底検査を行う頻度が増えます。一方で、原発閉塞隅角症では、年齢が上がるとともに、散瞳すると緑内障発作を起こすリスクが高まります。

しかし、白内障手術をすれば、隅角が拡がり、緑内障発作の発生をかなり低減することができます。

その観点からも、こちらの患者様は、そろそろ白内障手術をせざるをえない状況でした。

室内で過ごすことが多く、料理や裁縫をされるとのこと。なるべく眼鏡をかけずに過ごされたいとのご希望でした。

治療方針

もともと裸眼で遠くも近くも見えていたため、レンズ選定に悩みました。

一案として、単焦点レンズで中間距離狙いにすることも考えました。しかし当時53歳というご年齢で調節力が少し残っていることを考えると、この選択だと術前より見えにくくなったと感じる恐れがあります。

別の案として、単焦点レンズでマイクロモノビジョン(あえてわずかに左右差をつけて、裸眼で見える範囲を広げる手法)にすることも考えましたが、それでも術前より不便な見え方になったと感じることが危惧されました。

上記の二案のいずれにしても、ご満足いただけないだろうと予想されたため、通常の単焦点レンズではなく、レンティスコンフォートを提案しました。

使用した眼内レンズ

レンティスコンフォートは、保険診療の範囲内で使える焦点拡張型レンズです。単焦点レンズだと、理論上、どこか1点にしかピントが合いませんが、焦点拡張型レンズであるレンティスコンフォートは遠方から中間距離(約60~70cm)にかけてピントが合うように設計されています。

デメリットとしては、光がハの字に広がって見えたり、稀に物がうっすら重なって見える現象(ゴースト現象)などが生じるなどがあります。

この患者様は、レンティスコンフォートで、さらにマイクロモノビジョン法(あえてわずかに度数の左右差をつけて、裸眼で見える範囲を広げる手法)も使用することで、裸眼で見える範囲をできるだけ広げられるように試みました。

スリット検査画像
術前
右眼
術前右眼の状態
左眼
術前左眼の状態
術後
右眼
術後右眼の状態
左眼
術後左眼の状態

手術と結果

手術当日は、かなり緊張が強いご様子でしたが、低濃度笑気麻酔や鎮静剤を使用し、手術は無事終了しました。

術後視力は右遠見1.2(1.2)右近見1.0(1.2)左遠見1.2(1.2)左近見1.2(1.2)

ご本人様より、術前より近くも遠くも見え方が良くなった、老眼鏡をかけずに手元が見えるとおっしゃっていただきました。

※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。

60代、内科医師、自由診療、多焦点レンズ(レンティス)

60代/内科医師としてご活躍

使用レンズ:両眼LENTIS Mplus X 30

視力データ

術前視力
遠見 R)0.4(n.c.)
L)0.1(0.8×S-4.00D)
近見 R)0.2(0.4×S+2.0D)
L)0.2(0.7×S-2.50D)
術後視力
遠見 R)1.2(better×S-0.50D)
L)1.2(n.c.)
近見 R)1.0(1.2×S+0.50D)
L)1.2(n.c.)

患者様の状態・ご要望

60代、内科医師としてご活躍されている方です。両眼ともかすむようになり、眼鏡をかけても見えにくく、また自動車運転免許の更新を控えているということで白内障手術をご希望されました。

お仕事の都合上、なかなかお休みがとれないということで、できるだけ通院日数が少なくなるようにスケジュールを組ませていただきました。

術前視力は右0.4(矯正不能)、左0.1(0.8)

診療で、内視鏡を使う、エコーもする、カルテやパソコンも見るとのことでした。お仕事の際は、できるだけ裸眼で見たいとのお話しでしたので、単焦点レンズでは全てのご要望を満たすのが難しいと考え、多焦点レンズLENTIS Mplus X 30をご提案しました。

使用した眼内レンズ

ドイツのoculentis社によるLENTIS Mplus X 30は、レンティスシリーズの最新モデル(2024年5月当時)で、シリーズの中でもっとも近くが見える多焦点レンズです。完全オーダーメイド製で、手術を受ける方の度数に合わせて0.01D単位での調整が可能です。強い乱視にも対応しています。

シリーズに共通の、光が八の字のように下方に伸びて見える現象や、うっすら重なって見える現象(ゴースト現象)があるものの、光エネルギーロスが少ないため、多焦点レンズの中でもコントラスト感度があまり落ちないレンズのひとつです。

手術方針

当院では多焦点レンズを挿入する際は2段階挿入を行っており、まず片眼に多焦点レンズを挿入し、2週間程度過ごして見え方を確認した後に反対の眼に挿入するレンズを決めるという手法をとっています。

まず右眼にLENTIS Mplus X 30を挿入し、術後に見え方にご満足いただいたため、左眼も同じLENTIS Mplus X 30を選択しました。

スリット検査画像
術前
右眼
術前右眼の状態
左眼
術前左眼の状態
術後
右眼
術後右眼の状態
左眼
術後左眼の状態

手術結果

術後の裸眼視力は両眼とも遠見1.2、近見1.2。

エコーも、内視鏡も、パソコン画面もよく見える。遠くの看板も見えるので、運転に支障がないとおっしゃっていました。

70代、画家、多焦点レンズ(クラレオンパンオプティクス)

70代/画家として活動

使用レンズ:両眼クラレオンパンオプティクス

視力データ

術前視力
遠方 R)0.3(1.2×S-0.50 C-2.50 Ax100°)
L)0.08(0.1×S-3.50 C-0.50 Ax60°)
近方 R)1.0(1.2×S+1.50 C-2.50 Ax100°)
L)0.1(n.c.)
術後視力
遠方 R)1.2(1.2×S0 C-0.50 Ax160°)
L)1.0(1.2×S-0.50)
近方 R)0.9(1.0×S0 C-0.50 Ax160°)
L)0.8(1.0×S+0.50 C-0.75 Ax80°)

患者様の状態・ご要望

70代、画家として活動されている方です。内科で糖尿病を指摘され、眼底検査を受けるように指示されたとのことで当院を受診されました。その後、夜になると見えにくい、左眼がかすむとの訴えで再来され、左眼の白内障手術をご希望されました。

術前の左眼の遠方裸眼視力は左0.08、近方裸眼視力は0.1。画家という職業柄、見え方のご要望が多く、また遠方と近方を交互に見ることが多いとのことで3焦点型多焦点レンズをご希望されました。そこで遠見、中間、近見が見やすいクラレオンパンオプティクスをご提案し、このレンズに決定しました。

使用した眼内レンズ

クラレオンパンオプティクスは選定療養対象の3焦点型多焦点レンズで、近見焦点距離は約40cm。2023年7月に販売開始されたクラレオンビビティと比較すると、焦点距離はやや近くになります。今回、患者様が手術をご希望されたのが、利き目ではない左眼であったことからも、クラレオンパンオプティクスを入れて見え方を確認してみるという方針で同意を得ました。

スリット検査画像
術前
右眼
術前右眼の状態
左眼
術前左眼の状態
術後
右眼
術後右眼の状態
左眼
術後左眼の状態

手術結果

術後の左眼遠見裸眼視力は1.2、近見裸眼視力は0.9と良好で、患者様ご自身も遠見、近見ともに見やすくなったとお話しされていました。左眼術後、早めに右眼の白内障手術もご希望されました。左眼の調子が良いとのことで、右眼も同じクラレオンパンオプティクスを選択されました。右眼は乱視が-2.50ジオプターありましたので、乱視用のレンズを選択し、術後の右眼遠見裸眼視力1.2、近見裸眼視力0.9。両眼とも見え方にはまったく支障ないと仰っていただけました。

70代、多焦点レンズ、自由診療、ミニウェル

70代/建築会社勤務

使用レンズ:両眼ミニウェル

視力データ

術前視力
遠見 R)0.2(0.4×S+1.0D)
L)0.5(0.7×S+1.50D C-2.50D Ax100°)
近見 近見視力検査結果なし
術後視力
遠見 R)1.0(1.0×S+0.50D C-1.25D Ax85°)
L)1.2(1.2×S+0.50D C-1.00D Ax85°)
近見 R)0.6(1.0×S+1.50D C-1.25D Ax85°)
L)0.7(1.0×S+2.00D C-1.00D Ax85°)

患者様の状態・ご要望

かすんで文字が読みづらいとのことで、白内障手術ご希望で当院を受診されました。

初診時視力は右遠見0.2(0.4)左遠見0.5(0.7)※

【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】

両眼とも白内障が進行し、視力が低下していました。

建築会社にお勤めの方で、お仕事上、遠くも手元もよく見る、毎日ミリ単位でのお仕事をされているとのお話でした。

事前にご自身でもリサーチされていて、ご本人様からミニウェル希望とお申し出になりました。

使用した眼内レンズ

ミニウェルはイタリアのSIFI MedTech社が販売する多焦点眼内レンズです。

焦点拡張型の多焦点眼内レンズで、レンズ上に3層の同心円状の構造を設けることで、遠方から中間距離にかけてスムーズに見ることができます。

また球面収差を利用した構造で、光の輪や光のにじみといったハロー・グレア症状が出にくいという特長があります。特に夜間の運転時には、他の多焦点眼内レンズよりもすっきりして見やすいと考えられます。

ミニウェルでは近くは見えないため老眼鏡をかける必要があること、またクリアさを重視するのであれば単焦点には及ばないことをご説明し、ご了承の上で、ミニウェルを挿入することとなりました。

スリット検査画像
術前
右眼
術前右眼の状態
左眼
術前左眼の状態
術後
右眼
術後右眼の状態
左眼
術後左眼の状態

手術結果と経過

術後視力は右遠見1.0(1.0)右近見0.6(1.0)左遠見1.2(1.2)左近見0.7(1.0)

手術直後は、明るくなった、すっきりした、近くよりも遠くのほうが見やすいとおっしゃっていました。

しかし1年後、徐々に近くは見えるものの遠くが見えにくくなってきたとのことで、若干の度数変化を認めました。

裸眼での見え方を改善したいとの強いご希望があったため、レーシックでの度数補正(タッチアップ)を行い、視力が改善しました。

ミニウェルシリーズについて

※この方が手術を受けた2019年当時、ミニウェルは「ミニウェル レディ」というレンズ1種類だけでした。しかし2025年現在は、「ミニウェル プロクサ」というレンズも登場しています。

これら2つのレンズの違いですが、「ミニウェル レディ」は遠くから中間を得意とする一方、「ミニウェル プロクサ」は、より近方が見えるという特長があります。これらのレンズは2種で1セットとなっており、組み合わせて使うことでそれぞれの強みを生かしながら、遠くから近くまで良好な見え方を実現できるとされています。(ウェルフュージョンシステム)

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