症例37:涙管チューブ挿入術後のアクティブフォーカスとビビティのMix & Match

患者様の状態・ご要望

 

使用レンズ:右アクティブフォーカス 左ビビティ

手術眼:両眼

「右目がかすむ」「涙っぽくて気になる」との訴えで来院された60代の患者様です。診察の結果、白内障と右涙道閉塞(鼻涙管閉塞症)が見つかりました。

涙道閉塞とは、涙の通り道が詰まることで涙が鼻へ流れにくくなり、涙があふれたり、目やにや充血が起こったりする病気です。

 

初診時の視力は

右遠見0.06(0.15) 右近見(0.1) 左遠見0.1(1.0) 左近見(0.5)※

【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】

右眼は白内障による見えにくさに加え、涙道閉塞による涙目も日常生活の負担となっていました。

視力データ

検査時期 遠見視力 近見視力
術前 【白内障手術 術前視力】
R)0.06(0.15×S-3.00D C-2.00D Ax180°)
L)0.1(1.0×S-4.75D C-0.75D Ax180°)
R)0.1(n.c.)
L)0.09(0.5×S-3.00D)
術後 【白内障手術 術後視力】
R)1.2(1.2×S-0.50D)
L)1.0(1.2×S±0.00D C-1.00D Ax65°)
R)0.6(1.0×S+2.00D)
L)0.7(1.2×S+1.75D)

手術方針と結果

白内障手術は非常に安全性の高い手術ですが、涙道閉塞がある状態で手術を行うと、術後感染症のリスクが高まります。そのため、この患者様ではまず右眼の涙道閉塞を治療する方針としました。

 

涙管チューブ挿入術を行い、涙道の詰まりを改善。再閉塞を防ぐためにチューブを約1~2か月留置します。その後、外来でチューブを抜去します。多くの場合、痛みなく終了します。

 

術後は経過を丁寧に観察し、チューブ抜去後も涙や目やにが落ち着いていることを確認してから、白内障手術へ進みました。

 

白内障は両眼に認めていましたが、左眼は視力(1.0)と良好であり、患者様は「まずは視力が低下している右眼だけ手術を受けたい」と希望されました。

後から伺ったところによると、多焦点眼内レンズに興味があるものの、費用面も気になるため、まず片眼だけで見え方を確認したいというお気持ちもあったとのことです。

 

多焦点レンズにはいくつもの種類がありますが、選定療養の多焦点レンズをご希望されていたこと、またコントラスト感度が低下しにくいものをと考え、active focusを選択しました。

 

ActiveFocusは、日本アルコン株式会社より2018年に発売された回折型の多焦点眼内レンズです(2026年現在は販売終了)。遠方へ光を効率よく届ける設計と、瞳孔の大きさに応じて光を最適に配分する「アポダイズ回折」を組み合わせることで、遠方の鮮明さを保ちながら中間・近方まで幅広い見え方を目指したレンズです。ハロー・グレアを抑えつつコントラストも保ちやすく、夜間運転やスポーツなど、遠くをはっきり見る機会が多い方にも適したレンズとして使用されてきました。

 

右眼白内障手術後、視力は

右遠見1.2(1.2) 右近見0.6(1.0)

と改善し、ご本人様からも「クリアに見えるようになりました」というお言葉をいただきました。

 

その後約6年間、白内障手術をしていない左眼はコンタクトレンズで生活されていました。

見え方には支障ないものの、コンタクトレンズの洗浄などのケアが大変と感じられるようになったとのことで、左眼の白内障手術を希望されました。

 

この頃にはActiveFocusは販売終了となっていたため、左眼には ビビティ(Vivity) を選択しました。

 

Vivityは焦点深度拡張型(EDOF)の多焦点眼内レンズです。独自の「X-WAVEテクノロジー」により光を無駄なく利用し、遠方から中間距離まで自然につながる見え方が期待できます。従来の回折型多焦点レンズに比べて光のロスが少なく、コントラストが保たれやすいことが特徴です。また、ハロー・グレアが比較的少ないため、夜間の見え方にも配慮された設計となっています。一方で、新聞やスマートフォンなど近距離の細かな文字では眼鏡が必要になる場合があります。

 

左眼の術後の視力は

左遠見1.0(1.2) 左近見0.7(1.2)

と良好。

患者様も

「遠くも近くもくっきり鮮やかに見えるようになりました。」

「両眼とも多焦点レンズになって、見え方がとても楽になりました。」

とお話しくださいました。

 

特に印象的だったのは、ビビティは近方がやや弱いとされるレンズでありながら、

・編み物

・針仕事

も裸眼で楽しめているとのお話でした。

もちろん針に糸を通すような非常に細かい作業では眼鏡が必要ですが、日常生活では十分満足されているとのことです。

 

検診の際に、右眼のみでの見え方と左眼のみでの見え方を比べてみていただいたところ、

「Vivityのほうが明るく、くっきり見える」

とのことでした。

これは、回折型のactive focusよりも、焦点深度拡張型のvivityのほうが、光エネルギーのロスが少なく、ハロー・グレアも抑えられていることが関係していると考えられます。

 

多焦点眼内レンズには、それぞれ異なる特徴があります。どのレンズが最適かは、生活スタイルや趣味、仕事、夜間運転の有無などによって変わります。

当院では、選定療養・自由診療を含め幅広い種類の多焦点眼内レンズに対応しており、一律に同じレンズをご提案するのではなく、患者様のお話を丁寧に伺いながら、それぞれの生活に合ったレンズや度数設計をご提案しています。

また、術後に度数のずれや見え方への違和感が生じた場合にも、レーシックによる度数調整や眼内レンズ交換などの再調整を院内で行える体制を整えています。

患者様が手術後も長く安心して快適な視生活を送れるよう、治療前のご相談から術後のフォローまで、一人ひとりに寄り添った診療を大切にしています。

 

※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。

術前・術後比較

白内障手術 術前

右眼
右眼
左眼
左眼

白内障手術 術後

右眼
右眼
左眼
左眼