症例36:翼状片手術をしたことで多焦点レンズ「オデッセイ」を挿入できた症例
患者様の状態・ご要望
使用レンズ:オデッセイ
手術眼:両眼
今回ご紹介するのは、60代の女性の患者様の症例です。
この方は、右眼の充血をきっかけに受診されました。診察の結果、充血の原因は「翼状片(よくじょうへん)」という角膜の病気の影響でした。また両眼の白内障、さらに強度近視も認めました。
視力は
右遠見0.06(0.7) 左遠見0.04(0.8)※
【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】
視力データ
| 検査時期 | 遠見視力 | 近見視力 |
|---|---|---|
| 術前 | 【翼状片手術 術前視力】 R)0.06(0.7×S-9.00D C-2.25D Ax5°) L)0.04(0.8×S-8.00D C-1.75D Ax175°) 【白内障手術 術前視力】 R)0.03(0.7×S-10.50D C-1.00D Ax130°) L)0.04(0.7×S-8.50D C-2.50D Ax180°) |
【白内障手術 術前視力】 R)0.1(0.5×S-8.00D C-1.00D Ax130°) L)0.1(0.5×S-6.00D C-2.50D Ax180° |
| 術後 | 【白内障手術 術後視力】 R)1.0(n.c.) L)1.2(n.c.) |
【白内障手術 術後視力】 R)0.8(0.9×S+2.00D C-0.75D Ax170°) L)0.9(1.2×S+2.50D) |
手術方針と結果
患者様は白内障手術をご希望されましたが、私はまず翼状片の手術を先に行うことをご提案しました。なぜなら、翼状片がある状態で白内障手術を行うと、術後の度数に誤差が生じ、期待した裸眼視力が出ない場合があるからです。最終的に患者様が「正確に、安定して見える」ことを大切にした判断です。
また翼状片手術では、私は10年以上前から「結膜遊離弁移植術」を行っており、術後の再発はほとんど認めていません。
翼状片手術後も、すぐに白内障手術を行うのではなく、角膜の状態や屈折が落ち着くまで慎重に経過を観察しました。3~6か月ほど様子を見ながら検査を重ね、角膜の状態が安定していることを確認し、翼状片手術から約8か月後に両眼の白内障手術を行いました。
白内障手術で挿入する眼内レンズの選択にあたり、患者様のご希望や普段の過ごし方について丁寧にお話を伺いました。
「近くが見えるレンズがいい」「ライトのギラつきはできるだけ少ないほうが安心」「遠くよりも、どちらかというと近くを重視したい」——そんなご希望に最も寄り添えるだろうレンズとして、選定療養対象の多焦点眼内レンズ「オデッセイ」をご提案しました。
TECNIS Odyssey(テクニス オデッセイ)は、Johnson & Johnson社が開発した多焦点眼内レンズ(IOL)です。海外では「Full Visual Range IOL」と呼ばれる、新しいタイプの連続焦点眼内レンズに分類されています。
このレンズは、「Freeformテクノロジー」や「High resolutionレースカット」といった高度な技術を使って作られています。レンズの表面を非常に細かく、正確に設計することで、遠くから近くまで、視力がなめらかにつながるように見えるのが大きな特徴です。
特に、遠くと近くだけでなく、その間にあたる中間距離でも見え方が落ちにくく、日常生活の中で自然な見え方が期待できます。術後1か月の調査では、92%以上の患者さんが眼鏡を使わずに生活できているという報告もあります。
また、このレンズは残余屈折(手術後に度数のズレが残ること)に対しても強いという特徴があります。もし目標としていた度数から少しズレが生じた場合でも、視力への影響が出にくいことがデータで示されています。
さらに、TECNIS Odysseyは、夜に光がにじんだり輪っか状に見えたりするグレアやハローといった症状を抑えやすく、コントラスト感度も低下しにくい設計です。そのため、暗い場所や夜間でも、比較的はっきりとした見え方が期待できるレンズとされています。
翼状片の既往がある方ではありましたが、CASIAで撮影した画像で角膜がきれいな状態に回復していることを確認できたため、この多焦点レンズの性能を十分に活かせると判断しました。
全眼球高次収差を表すHOAsが0.66→0.22、Coma収差が0.30@355°→0.10@308°に改善している
まずは左眼にオデッセイを挿入しました。術後、「近くも遠くも自然に見える」と満足され、反対の右眼も同じレンズをご希望されました。結果として、ミックス&マッチ(左右で異なる多焦点レンズを入れる方法)は行わず、両眼ともオデッセイを挿入しています。
手術後は、近方・遠方ともに良好な視力が得られました。
右遠見1.0(1.0) 右近見0.8(0.9) 左遠見1.2(1.2) 左近見0.9(1.2)
もともとドライアイの傾向があり、術後にシパシパ感を訴えられましたが、点眼治療を調整しながら経過を丁寧に見守っています。翼状片の再発もなく、全体として非常に安定した経過です。
白内障手術は、単に濁りを取る治療ではなく、その方の「これからの生活」に寄り添う医療だと考えています。眼の状態を正確に評価し、必要な治療を一つずつ積み重ねることで、より満足度の高い見え方につながるでしょう。
※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。
術前・術後比較
白内障手術 術前
- 右眼
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- 左眼
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白内障手術 術後
- 右眼
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- 左眼
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