症例32:レンティスMplusX30との Mix & Match でピュアシーを選択した症例
患者様の状態・ご要望
使用レンズ:右ピュアシー 左レンティスMplusX30
手術眼:両眼
今回は、左右の眼に異なる多焦点眼内レンズを組み合わせる「Mix & Match」という方法を用いた白内障手術の症例をご紹介いたします。
患者様は70代の方で、右眼の視力低下と眩しさを自覚され受診されました。診察の結果、両眼に白内障を認めました。
視力は
右遠見0.3(0.7) 右近見0.2(0.6) 左遠見0.4(1.0) 左近見0.4(0.7)※
【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】
患者様は両眼の白内障手術をご希望されました。
お若いころは近視はなく、ここ数年で徐々に右眼の視力が低下してきたとのことでした。
また、白内障手術にあたっては自由診療の多焦点眼内レンズをご希望され、まず左眼にレンティスMplusX30を挿入することになりました。
視力データ
| 検査時期 | 遠見視力 | 近見視力 |
|---|---|---|
| 術前 | ||
| 術後 |
手術方針と結果
【タップしてレンティスMplusX30の説明ページにとぶ】
Lentis MplusX30は、ドイツのoculentis社が開発した多焦点眼内レンズです。
プレート型のレンズで全長11mm、その中央に直径6mmの光学部分があります。
この光学部分の上方が球面・非対称の構造をもつ遠用部分、下方が扇状の構造を持つ近用部分となっている、セクター型と呼ばれる多焦点眼内レンズです。遠用部と近用部に境目がないため光のロスが少なく、他の多焦点レンズに比べてコントラスト感度が低下しにくいといった特徴があります。
また、他の多焦点レンズと比べてハローやグレアも生じにくくなっています。
先に手術を行った左眼の視力は
左遠見1.0(1.2) 左近見0.7(0.8)
と良好。
視力の数値としては良好でしたが、患者様ご本人としては
「遠・中・近の全てが見えにくい」
「人が二人いるようにブレて見える(ゴースト現象)」
といった違和感があるとのことでした。
また、「できればもう少し遠くの見え方を良くしたい」というご希望もありました。
そこで右眼には、遠方から中間距離の見え方に強いレンズとして、選定療養の対象となる「ピュアシー」を選択しました。
【タップしてピュアシーの説明ページにとぶ】
TECNIS PureSeeは、Johnson & Johnson社が開発した非回折・屈折型のEDOF(焦点深度拡張)眼内レンズです。
従来の多焦点レンズは、遠く・中間・近くを見るためにレンズ内に複数のゾーンを持たせる設計が一般的でした。
しかし、ピュアシーはこの「ゾーン」を設けず、レンズ後面の中心部にかけてなだらかに屈折力を変化させる独自の設計を採用しています。
これにより、遠くから中間にかけてスムーズにつながった見え方を実現し、夜間の光のにじみ(グレア・ハロー)も単焦点レンズ並みに抑えられます。
また、術後にわずかに度数がずれた場合でも視力の落ち込みが少なく、患者様の満足度が高いことも報告されています。(残余屈折耐性)
さらに、瞳孔の大きさが変化してもコントラストが安定しており、明るい場所・暗い場所いずれにおいても自然でクリアな見え方が期待されます。
右眼の手術後、視力は
右遠見1.2(1.2) 右近見0.5(1.0)
遠方視力の数値としては非常に良好でしたが、患者様は当初
「遠くの見え方が少し弱くなったような気がする」
と仰っていました。
しかし、術後2か月の検診では
「最近、見えるようになってきました」
とお話しくださいました。
多焦点レンズの場合、手術後まもない時期には見えにくくても、時間の経過とともに見え方が改善することがあります。
その理由として
・手術後のドライアイが改善してくる
・ニューロアダプテーション(脳が見え方に慣れてくる)
といった要因が考えられます。
その後、患者様は
「遠くはとてもよく見えるが、本や辞書などの小さな文字は少し見えにくい」
とのことで、近用眼鏡(老眼鏡)を作成されました。
レンティスMplusX30を挿入された方で眼鏡を必要と感じる方は多くありませんが、今回の症例では、もしレンティスMplusX30を両眼に挿入していた場合には、近用眼鏡の使用頻度をさらに減らせた可能性も考えられます。
左右の眼に異なる種類の多焦点レンズを入れる Mix & Match という手法は、それぞれのレンズの特徴を活かしながら見え方のバランスを取ることができる一方で、眼鏡の使用頻度が増えるなど、良いことばかりではないのだなと感じられた症例でした。
白内障手術では、「どのレンズを入れるか」だけでなく、患者様がどのような見え方を望んでいるのかを丁寧に理解することが非常に重要です。
当院では、手術前に
・日常生活でよく見る距離
・趣味やお仕事
・眼鏡をどの程度使いたいか
・夜間運転の有無
などを詳しくお伺いし、その方の生活に合ったレンズの種類や度数設計をご提案しています。
また、万が一
・不快な光の見え方(ハロー・グレア)
・度数のずれ
などが生じた場合でも、
・レーシックによる度数の微調整
・眼内レンズの入れ替え
などを院内で行うことができ、見え方の再調整にも対応しています。
見え方は、日々の生活の質に大きく関わるものです。
だからこそ私たちは、一人ひとりの患者様の声に耳を傾けながら、その方にとって最も自然で快適な見え方を目指した白内障手術を心がけています。
※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。