症例26:他院で白内障手術後に当院で顆粒状角膜ジストロフィーに対するPTKを施行した症例
患者様の状態・ご要望
使用レンズ:単焦点
手術眼:左眼
他院で左眼の白内障手術を受けられたものの、術前と見え方があまり変わらないとの訴えで受診されました。
視力は
右遠見0.2(0.7) 左遠見0.5(0.6)※
【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】
両眼に顆粒状角膜混濁を認めました。
視力データ
| 検査時期 | 遠見視力 | 近見視力 |
|---|---|---|
| 術前 | R)0.2(0.7×S+3.75D C-1.00D Ax90°) L)0.5(0.6×S+0.25D C-0.50D Ax155°) |
左眼のみ施行 L)0.5(0.7×S-0.50D) |
| 術後 |
手術方針と結果
白内障手術で改善しなかった視力低下の原因は顆粒状角膜変性であると考えました。
ご本人様が見え方の改善を強く望まれていたこともあり、レーザー治療的表層角膜切除術:Phototherapeutic Keratectomy(以下PTK)予定としました。
白内障と角膜顆粒状変性がある場合、当院では通常、先に顆粒状角膜変性に対するPTKを行い、その後に白内障手術を行います。なぜなら、PTKで角膜を削った後は遠視となり、遠くも近くも見えにくい状態となりますが、その後の白内障手術の際に遠視を打ち消す度数の眼内レンズを挿入することで、見え方が改善するからです。
ところが、この方は左眼の白内障手術が終了した状態で受診されました。また白内障手術の際に、ほぼ正視(遠視も近視もない状態)を狙っているようです。
ここから通常のエキシマレーザー照射を行ったのでは、照射後に不正乱視と中等度以上の遠視が生じるため、裸眼視力は今より低下してしまいます。
そこで、まず-3.0D程度の近視照射を行った後、+3.0Dの遠視照射を行うこととしました。こうすることで、術後も屈折が変わらないように(この患者様の場合は正視となるように)狙うことが可能です。
ただしデメリットもあります。遠視照射の場合は上皮再生に時間がかかるのです。近視のエキシマレーザーの照射径は6mmですが、遠視照射の照射径は9mm。上皮剥離の範囲が広いため、上皮再生に時間がかかります。また術後の痛み、感染、ヘイズ等のリスクも高まります。
PTK後視力は
左遠見0.5(0.7)
術後も視力には限界があり、術前とあまり変わりませんでした。
磨りガラス状の混濁は減っているものの、辺縁明瞭な深い混濁は残っています。
もし-4.5D~-5.0Dほど削れば、より濁りはとれますが、+5.0Dの遠視はエキシマレーザーで補正できないことから、切除深度には限界があります。
この方は先に白内障手術が完了していたケースですが、通常、顆粒状角膜変性と白内障がある場合には、白内障手術は先に行わないほうが良いと考えています。
私としては、
1.PTKで概ね-4.0Dくらいの照射を行う。(どのくらいを狙うかは、角膜混濁の深さ等によります)
2.PTK後に眼が遠視化する。
3.白内障手術を行い、遠視化した分を打ち消す眼内レンズを挿入する
という方針をとっています。
この方針ですと、照射径も6mmで上皮再生も早く、ヘイズのリスクも低減できます。
また、通常の照射では不正乱視が生じやすいため、リフラクティブ照射をして乱視減を図っています。
さらに、PTKを行う前に、白内障手術後のピントの位置は近方狙い希望か遠方狙い希望かまで聞き取りを行っています。患者さんの眼やご希望によっては眼内レンズが規格外のこともあるため、それらを想定したPTK深度を考慮しています。
もし先に白内障手術をしてからPTKをする場合でも、PTK後の遠視化を考えると、正視狙いではなく-3.0D~-4.0D程度の近視があるほうが望ましいでしょう。
※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。



