症例40:ビビティとクラレオンパンオプティクスプロのMix & Matchを行った症例

患者様の状態・ご要望

使用レンズ:右ビビティ 左クラレオン パンオプティクス プロ

手術眼:両眼

70代の患者さまが、「手元が見えにくくなり、きゅうりの千切りができなくなった」とのことで来院されました。

ご友人からも「見えにくいなら、早く白内障手術をしたほうがよい」と強く勧められていたそうです。

 

診察して両眼の白内障を認めました。

初診時の視力は

右遠見0.7(1.0) 右近見0.2(0.9)  左遠見0.7(0.9) 左近見0.3(0.8) ※

【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】

でした。

視力データ

検査時期 遠見視力 近見視力
術前 R)0.7(1.0×S+1.50D C-0.50D Ax80°)
L)0.7(0.9×S+1.75D C-0.50D Ax80°)
R)0.2(0.9×S+4.00D C-0.75D Ax80°)
L)0.3(0.8×S+4.25D C-0.50D Ax80°)
術後 R)1.0(1.2×S+0.50D)
L)1.2(1.2×S+0.50D)
R)0.6(1.0×S+1.25D)
L)0.8(1.0×S+0.50D)

手術方針と結果

患者さまは多焦点レンズを使用した白内障手術を希望されていましたが、ひとつ大きなご希望がありました。

「できるだけくっきり見たい」

ということです。

 

そこで、単に「よく見えるレンズ」を選ぶのではなく、普段の生活でどのような見え方を大切にされているのかを伺いながら、レンズを検討しました。

また、もともと遠視があることから、遠方から中間距離までの見え方を重視することが望ましいと考えました。さらに、コントラスト感度が低下しにくいことも重視し、ビビティを選択しました。

なお、近くを見る際には老眼鏡を使用することも、ご本人は了承されていました。

 

ビビティについてはこちらをご覧ください。

ビビティは焦点深度拡張型(EDOF)の多焦点眼内レンズです。遠方から中間距離まで自然につながる見え方が期待できます。回折型多焦点レンズと比べると、光のロスが少なく、コントラストが保たれやすいことが特徴です。また、ハロー・グレア(光の輪や光のにじみ)が比較的少なく、夜間の見え方にも配慮された設計となっています。一方で、新聞やスマートフォンなど近距離の細かな文字では眼鏡が必要になる場合があります。

 

右眼にビビティを入れて、術後視力は

右遠見1.0(1.2) 右近見0.6(1.0)

となりました。

 

診察時に見え方を伺うと、「遠くはよく見える。近くはまあまあ」とのことでした。

右眼の見え方には、ご本人も満足されていました。

 

その後、左眼の手術についてレンズを選ぶ際、患者さまからこんな言葉がありました。

「右眼の見え方には満足しているけれど、近くがもっとすっきり見えるといいな。近くは老眼鏡をかけるつもりだったけれど、やっぱり裸眼で見たい」

右眼の手術を終え、実際の見え方を経験したことで、ご本人の希望が変わったのです。

このような変化は、白内障手術のレンズ選びでは大切なことだと考えています。

 

そこで左眼には、右眼のビビティと同じプラットフォームから出ている別の多焦点レンズ、クラレオンパンオプティクスプロを選択しました。

 

クラレオンパンオプティクスプロについてはこちらをご覧ください。

クラレオンパンオプティクスプロは、従来から高い評価を受けてきたクラレオンパンオプティクスをベースに、さらに光利用効率を高めた多焦点眼内レンズです。

新しいENLIGHTEN® NXT 光学テクノロジーにより、光利用率は約94%まで向上し、従来モデルよりも光ロスをさらに減らしています。

その結果、

・明るく自然に感じやすい見え方

・コントラストの向上

・薄暗い場所での見え方の改善

などが期待されています。

 

また、焦点深度拡張型(EDOF)レンズであるビビティと比較すると、近方の焦点距離が約40cmと、近方にピントが合いやすい設計となっており、読書やスマートフォンを見る機会が多い方には大きなメリットがあります。

さらに、従来のクラレオンパンオプティクスと比較してハロー・グレアの軽減も期待されており、夜間の見え方にも配慮された設計となっています。

 

このように、多焦点眼内レンズにはそれぞれ特徴があり、すべての方に同じレンズが適しているわけではありません。

そのため、レンズの特徴だけを見るのではなく、患者さまが実際にどのような生活をされ、どの距離を裸眼で見たいのかを考えながら選択することが重要です。

 

この患者さまには、

右眼:ビビティ

左眼:クラレオン パンオプティクス プロ

という、左右で異なる多焦点眼内レンズを使用しました。

 

このように、左右それぞれのレンズの特徴を組み合わせる方法を、「Mix & Match(ミックス&マッチ)」と呼びます。

 

「両眼に同じレンズを入れる」という方法だけが選択肢ではありません。

 

左右の眼の状態や患者さまの希望に応じて、それぞれ異なるレンズを選択することで、両方のレンズの特徴を生かすことを検討できます。

 

もちろん、Mix & Matchがすべての患者さまに適しているわけではありません。

 

眼の状態、術前の屈折、角膜や網膜などの状態、ライフスタイル、そして「どこまで裸眼で見たいか」といった希望を総合的に考える必要があります。

 

左眼の手術後の視力は、

左遠見1.2(1.2) 左近見0.8(1.0)

となりました。

 

「遠くも近くもよく見える」と話され、左右の見え方の違いも特に感じないとのことでした。

また、夜間のライトについても、ビビティを入れた右眼でも、クラレオンパンオプティクスプロを入れた左眼でも、ぎらつき等は気にならないとのことでした。

 

そして、診察の際に特に印象に残ったのが、散歩をしたときのお話です。「湖やため池が、絵葉書のように鮮やかに見える。立体感もある」と話してくださいました。

手術前にはできなくなっていた、きゅうりの千切りもできるようになったそうです。

 

白内障手術によって視力の数字が改善することはもちろん大切です。

しかし、それ以上に大切なのは、患者さまが日々の生活の中で「見えるようになった」と実感できることではないでしょうか。

 

料理をする。

散歩をする。

景色を見る。

新聞やスマートフォンを見る。

 

一人ひとりにとって、「見たいもの」「大切にしたい距離」は違います。

 

今回の症例では、手術前の希望だけでなく、右眼の手術後に実際の見え方を経験したことで生まれた新たな希望も踏まえ、左眼のレンズを改めて検討しました。

患者さまの言葉を聞きながら、左右のレンズをそれぞれ選択する。

それが、この症例におけるMix & Matchの意味でした。

 

多焦点眼内レンズには、それぞれ異なる特徴があります。

当院では、対応できる多焦点眼内レンズを複数用意し、選定療養の対象となるレンズだけでなく、自由診療の対象となるレンズにも対応しています。

 

レンズを選ぶ際には、単に「多焦点レンズを入れる」ということではなく、

・どの距離を裸眼で見たいのか

・読書やスマートフォンを見る機会がどの程度あるか

・車の運転をするのか

・夜間の見え方をどの程度重視するのか

・眼鏡を使うことをどこまで受け入れられるのか

・現在の眼の状態から、どのような見え方が期待できるのか

などを丁寧に確認します。

 

そのうえで、患者さまの生活や希望に合わせて、レンズの種類やピントの位置についても個別に検討します。

 

また、多焦点眼内レンズは、手術をすれば必ずすべての距離が完全に眼鏡なしで見えるというものではありません。

術後にハロー・グレアなどの不快光視現象が生じたり、希望する見え方と実際の見え方に差が生じたり、度数のずれが残ったりすることもあります。

そのような場合にも、状態を確認したうえで、必要に応じてレーザーによる屈折矯正や眼内レンズの入れ替えなど、術後の再調整まで含めて院内で対応できる体制を整えています。

 

白内障手術は、一度レンズを入れたら終わり、というものではありません。

患者さまがどのような生活を送りたいのかを伺い、その方に合った見え方を一緒に考え、手術後の状態まで確認していく。

当院では、そのような「一人ひとりの見え方を考える白内障手術」を大切にしています。

 

※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。

術前・術後比較

白内障手術 術前

右眼
右眼
左眼
左眼

白内障手術 術後

右眼
右眼
左眼
左眼