症例35:FEST法によりマイクロモノビジョンの度数を決定した症例
患者様の状態・ご要望
使用レンズ:ピュアシー
手術眼:両眼
今回は、FEST法を用いてマイクロモノビジョンの度数を丁寧に決定した白内障手術の症例をご紹介いたします。
患者様は70代の方で、初診時は右眼の痛みを主訴に受診されました。その際、狭隅角の状態であることが分かりました。狭隅角とは、眼の中の水の出口(隅角)が狭く、あるとき急激に眼圧が上昇して緑内障発作を起こす可能性がある状態です。
白内障手術を行ってしまえば、緑内障発作を起こすことは、ほとんどありません。
また、この患者様には遠視も認められました。遠視の方は、裸眼では遠くも近くもピントが合わず見えづらい状態です。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、人工のレンズ(眼内レンズ)を入れます。その際に遠視を改善する度数のレンズを選ぶことができるため、手術後は見え方が楽になるというメリットもあります。
このように、白内障手術をすると、緑内障発作の予防に加え、遠視の改善もできることをご説明したところ、両眼の手術をご希望されました。
視力データ
| 検査時期 | 遠見視力 | 近見視力 |
|---|---|---|
| 術前 | R)0.2(1.0×S+3.00D C-1.25D Ax90°) L)0.2(1.2×S+2.50D C-0.50D Ax90°) |
R)0.08(0.8×S+5.50D C-1.25D Ax90°) L)0.1(0.9×S+5.00D C-0.50D Ax90°) |
| 術後 | R)1.2(n.c.) L)1.0(n.c.) |
R)0.7(1.0×S+1.00D) L)0.5(1.0×S+1.50D) |
手術方針と結果
術前の視力は
右遠見0.2(1.0) 右近見0.08(0.8) 左遠見0.2(1.2) 左近見0.1(0.9)※
【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】
レンズについては、この患者様は選定療養の多焦点レンズをご希望されました。
選定療養の多焦点レンズにもいくつか種類がありますが、この患者様が遠視であることも考慮し、「TECNIS PureSee(ピュアシー)」というレンズを選択しました。
TECNIS PureSeeは、Johnson & Johnson社が開発した非回折・屈折型のEDOF(焦点深度拡張)眼内レンズです。
従来の多焦点レンズは、遠く・中間・近くを見るためにレンズ内に複数のゾーンを持たせる設計が一般的でした。
しかし、ピュアシーはこの「ゾーン」を設けず、レンズ後面の中心部にかけてなだらかに屈折力を変化させる独自の設計を採用しています。
これにより、遠くから中間にかけてスムーズにつながった見え方を実現し、夜間の光のにじみ(グレア・ハロー)も単焦点レンズ並みに抑えられます。
また、術後にわずかに度数がずれた場合でも視力の落ち込みが少なく、患者様の満足度が高いことも報告されています。(残余屈折耐性)
さらに、瞳孔の大きさが変化してもコントラストが安定しており、明るい場所・暗い場所いずれにおいても自然でクリアな見え方が期待されます。
白内障手術は、まず左眼から行いました。
左眼術後の視力は
左遠見1.0(1.0) 左近見0.5(1.0)
患者様は、「朝起きてすぐからよく見えて嬉しかった」とお話しくださいました。
一方で、「できればもう少し近くも見えるとありがたい」というご希望も伺いました。
そこで右眼は、やや近方寄りの度数に設定し、マイクロモノビジョンとする方針としました。
マイクロモノビジョンとは、片眼を遠く、もう片眼をわずかに近く寄りに合わせることで、眼鏡を使用する頻度を減らす方法です。
右眼の度数を決定するにあたり、FEST(Fellow-Eye Self-Turning)法を用いて丁寧に検討していきました。
具体的には、先に白内障手術を終えた左眼に、視力検査のときに使う眼鏡とレンズを使って、度数を+0.5Dずつ加入していきます。その都度、遠方や近方の見え方を体験していただき、
「もう少し手元が見える方がよい」
「遠くの見え方はこのくらい保ちたい」
といったご希望を確認しながら、最適なバランスの度数を決めていきます。
度数決定にあたっては、複数の機器を使って客観的な詳細なデータをとり、計算することも勿論重要です。
加えて、このFEST法を用いることで、データに現れない患者様ご自身のデリケートな感覚も反映することができます。
右眼術後の視力は
右遠見1.2(1.2) 右近見0.5(1.0)
術後、患者様は「眼鏡をかけなくても遠くも手元も見えるので、楽になりました」とお話しくださいました。
白内障手術では、どのレンズを入れるかだけでなく、どの度数に設定するかも非常に重要です。当院では、手術前のカウンセリングに十分な時間をかけ、
- 普段どの距離をよく見るのか
- 眼鏡の使用は、どの程度まで許容できるか
- 夜間運転の有無
- 趣味や生活スタイル
といった点を丁寧に伺いながら、その患者様にお勧めできるレンズのご提案と度数設定を行っています。
また、万が一手術後に
度数のずれ、不快な光の見え方(ハロー・グレア)
などが生じた場合にも、
レーシックによる微調整、眼内レンズの入れ替え
など、院内で対応できる体制を整えています。
見え方は、患者様の生活の質に直結する大切な要素です。だからこそ私たちは、お一人おひとりの見え方に寄り添いながら、最適な視機能を目指す医療を大切にしています。
※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。
術前・術後比較
白内障術前
- 右眼
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- 左眼
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白内障術後
- 右眼
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- 左眼
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