症例34:片眼に単焦点レンズを入れた後、反対の眼に多焦点レンズを選択した症例
患者様の状態・ご要望
使用レンズ:右眼Lentis MplusX 左眼単焦点
手術眼:両眼
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに「眼内レンズ」を挿入します。
そのレンズには、大きく分けて単焦点レンズと多焦点レンズがあります。
今回は、片眼に単焦点レンズ、もう片眼に多焦点レンズを挿入した40代の患者様の症例をご紹介いたします。
視力データ
| 検査時期 | 遠見視力 | 近見視力 |
|---|---|---|
| 術前 | R)0.08(1.0×S-3.50D C-1.25D Ax180°) L)0.07(0.9×S-2.75D C-2.25D Ax180°) |
R)0.2(1.0×S-2.00D C-1.25D Ax180°) L)0.3(0.7×S-1.00D C-2.25D Ax180°) |
| 術後 | R)1.2(n.c.) L)1.0(1.2×S-0.50D) |
R)1.2(n.c.) L)0.9(1.0×S+2.50D) |
手術方針と結果
患者様は、以前より近医眼科で白内障と診断されていました。
白内障手術をご希望され当院を受診。
初診時の視力は
右遠見0.08(1.0) 右近見0.2(1.0) 左遠見0.07(0.9) 左近見0.3(0.7)※
【※()の前は裸眼視力、()内は矯正視力です。例)1.0(1.2)=裸眼視力が1.0、眼鏡等を使った最高視力が1.2。】
と良好でしたが、左眼のまぶしさにお困りでした。
診察したところ、左眼の水晶体中央に濁りがあり、これがまぶしさの原因と考えられました。
ご本人のご希望で、まず左眼の白内障手術を行うことになりました。
白内障手術の際、レンズの選択を工夫すれば、元々近視が強く眼鏡が手放せなかった方でも、眼鏡なしで生活できるようにすることができます。
ただし、片眼のみ近視をなくすと、度数の左右差が大きくなり、眼鏡で対応できなくなります。
もしコンタクトレンズの使用に慣れた患者様でしたら、手術しないほうの眼はコンタクトレンズを使用することで対応可能です。
この患者様の場合は、もともとハードコンタクトレンズを使用されていたこと、眩しさで困っているのが左眼のみであることから、左眼のみの白内障手術をご希望されました。
左眼のレンズ選択にあたっては、主に費用の面から、選定療養の多焦点レンズまたは単焦点レンズのいずれを選ぶかで迷っていらっしゃいました。
多焦点レンズは遠くと近くの両方にピントが合いやすい一方で、
- ハロー・グレア現象(光のにじみ)
- コントラスト感度(くっきり感・鮮明さ)の低下
- 眼鏡が全く不要になるわけではない
といった特性もあります。
それらの要素を慎重に検討された結果、左眼は単焦点レンズをご希望されました。
単焦点レンズは、設定した距離にのみピントが合います。
そのため、近方にピントを合わせた場合は、中間距離や遠方を見るには眼鏡が必要と感じるでしょう。中間距離にピントを合わせた場合は、遠くや近くをしっかり見るにはそれぞれ眼鏡が必要と感じる可能性があります。
この患者様は、「近くを見やすくしたい」とのご希望から、単焦点レンズで近方狙いをご希望されました。
しかし私としては、以下の点が懸念されました。
- 近方狙いにすると、遠方が見えなくなり不便に感じる可能性があること
- もともと中等度近視であること
- まだ40代で活動的な生活を送られていること
そこで、中間距離狙いをご提案しました。
左術後の視力は
左遠見1.0(1.2) 左近見0.9(1.0)
患者様ご自身としては、遠くは見えるようになったが、「近くをもっとはっきり見たい」と感じる場面もあるとのこと。必要に応じて近用眼鏡(右眼はコンタクトレンズを装用した上からの眼鏡)を使用しながら生活されていました。
左の手術から約1年後、今度は右眼の見えにくさが進行。右眼の白内障手術をご希望で再来されました。
その際の視力は
右遠見0.08(0.9) 右近見0.3(0.9)
今回は、「今よりも近くを見やすくしたい」ということで、多焦点レンズを強くご希望されました。
左眼の手術の際は経済的理由から選定療養対象のレンズを考えていらっしゃったこと、また元々コントラストが良いため多焦点レンズの中でもコントラスト感度が低下しにくいpureseeが良いだろうと考え、ご提案しました。
しかし今回は、ご本人様が近くの見え方を重視したい、自由診療のレンズも考えているとのことから、Lentis MplusXを選択しました。
Lentis MplusXは、ドイツのoculentis社が開発した多焦点眼内レンズです。
プレート型のレンズで全長11mm、その中央に直径6mmの光学部分があります。
この光学部分の上方が球面・非対称の構造をもつ遠用部分、下方が扇状の構造を持つ近用部分となっている、セクター型と呼ばれる多焦点眼内レンズです。遠用部と近用部に境目がないため光のロスが少なく、他の多焦点レンズに比べてコントラスト感度が低下しにくいといった特徴があります。
また、他の多焦点レンズと比べてハローやグレアも生じにくくなっています。
右眼術後、視力は
右遠見1.2(1.2) 右近見1.2(1.2)
と良好でした。
ご本人様も
- 両眼で見て違和感はない。
- 鮮明さにも左右差はない。
- あえて片眼ずつで見比べると、左眼は近くが見えない。近くは右眼で見ているみたい。
- とても細かい文字を見るとき以外は、裸眼で事務作業なども支障なく行えている。
- スマホも裸眼で使用できている。
- 手術前に比べると、眼鏡を使用する頻度が減った。
と仰っていました。
一般的に、多焦点レンズは片眼のみに入れるよりも、両眼に入れたほうが、その力を発揮すると言われています。
しかしこの症例のように、片眼単焦点+片眼多焦点という組み合わせでも、高い満足度となるケースもあることをご紹介させていただきます。
当院では、
生活スタイル、お仕事の内容、趣味
などを丁寧にお伺いしたうえで、レンズの種類や度数設定をご提案しています。
一律に同じレンズを勧めることはしておりません。
また、万が一、「見え方に馴染まない」「度数ずれが生じた」といった場合にも、院内でレーシックによる微調整やレンズ入れ替えなどの再調整が可能な体制を整えています。
白内障手術は「レンズを入れて終わり」ではなく、その後の人生に寄り添う医療であるべきだと考えています。
※こちらの内容は参考情報としてご覧ください。すべての方に同様の効果が期待できるわけではなく、患者様ごとに状況は異なります。また手術にはリスクも伴います。詳細につきましては診察の際に医師とご相談ください。
術前・術後比較
白内障術前
- 右眼
-
- 左眼
-
白内障術後
- 右眼
-
- 左眼なし