症例8:クラレオンパンオプティクスとデフォーカスしたビビティのミックス&マッチ症例

患者様の状態・ご要望

使用レンズ:右眼:クラレオンビビティ(デフォーカス) / 左眼:クラレオンパンオプティクス

手術眼:両眼

両眼のかすみを訴えて受診され、白内障を認めた60代の患者様です。20代の頃からハードコンタクトレンズを使用されており、受診時も遠近両用コンタクトを装用。白内障手術後もできるだけ眼鏡を使わずに近くも遠くも見たいとのことで、多焦点レンズをご希望されました。

手術前の視力は 右遠見0 .1( 1.0) 右近見0 .5( 0.8) 左遠見0 .1( 0.9) 左近見0 .4(0.9)※【※() の前は裸眼視力、() 内は矯正視力です。 例) 1.0( 1.2)= 裸眼視力が1 .0、 眼鏡等を使った最高視力が1 .2。】

診察の中で、緑内障を疑う所見も認めたため、まずは右眼に非回折型レンズであるビビティを入れることを考えました。

この患者様は、現時点では緑内障の視野変化は認めませんでしたが、視神経の状態などから将来的に緑内障を発症する恐れがあります。(※1)もし緑内障が発症し、進行すると、感度が落ちて見えづらくなります。多焦点レンズは便利なレンズですが、コントラスト感度はやや低下する難点があります。緑内障が進行した場合、多焦点レンズを入れていることで更にコントラストが低下する恐れがあります。

視力データ

検査時期 遠見視力 近見視力
術前 R)0.1(1.0×S-5.00 C-1.50 Ax5°)
L)0.1(0.9×S-6.00 C-0.50 Ax90°)
R)0.5(0.8×S-2.50 C-1.50 Ax5°)
L)0.4(0.9×S-4.50 C-0.50 Ax90°)
術後 R)1.2(n.c.)
L)1.2(better×S+0.50)
R)0.9(1.0×S+1.50)
L)0.8(1.0×S+1.00)

手術方針と結果

ビビティは、焦点深度拡張型の多焦点レンズです。日本では2023年に厚生省の認可を得ましたが、アメリカでは2020年から販売・使用されています。X-WAVEテクノロジーという独自技術を用いた波面制御型のレンズで、光学的ロスがほとんどなく、遠方から中間距離の見え方を連続的に改善することができるため、他の多焦点レンズよりも自然な見え方に近い生活が期待できます。他の多焦点レンズと比較してコントラスト感度も落ちにくく、くっきりとした見え方が期待できます。

デメリットとしては、2024年時点で乱視対応レンズがないことと、近くの細かなもの(新聞や本、スマートフォンなど)を見るときには眼鏡が必要な可能性があることが挙げられます。※2025年にビビティの乱視用が発売されました。

この患者様は、現時点で視野変化がなく、緑内障でないならばという理由で多焦点レンズをご希望されました。そこで、望月眼科で取り扱っている多焦点レンズの中では単焦点に次いでコントラスト感度が高く、鮮明さが落ちにくいビビティを選択しました。

また、この患者様は読書やスマホも眼鏡なしで行いたいとご希望されており、ビビティをそのまま入れると手元が少し弱いと感じる可能性がありました。そこでビビティを通常よりも1段階だけ近くよりに(デフォーカス)して、右眼に挿入することにしました。

右眼手術後、よく見えるものの、もう少し手元が見えたほうが良いとのことでしたので、僚眼はクラレオンパンオプティクスを選択しました。クラレオンパンオプティクスは、遠くはもちろん、近方から中間(40〜80cm)に連続してピントが合う3焦点眼内レンズです。瞳孔径3.0mmでも光エネルギー利用率は88%と高く、どの距離を見る際にもコントラスト感度が良好で鮮明な見え方が期待できるといわれています。

術後の視力は右遠見1.2(1.2)、右近見0.9(1.0)、左遠見1.2(1.2)、左近見0.8(1.0)でした。

それぞれの眼の見え方を比べていただくと、遠くはクラレオンパンオプティクスを入れた左眼、近くはビビティを入れた右眼のほうが見えやすいとのことでした。一般的にビビティは近くが苦手な多焦点レンズですが、1段階だけ近くよりに(デフォーカス)して入れることで、結果的にクラレオンパンオプティクスよりも近くが見えやすくなった可能性があります。なお、全ての症例でこのような結果が出るとは限りません。

術前・術後比較