多焦点眼内レンズとは
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを入れます。
健康保険を使った診療では、単焦点眼内レンズを入れます。
単焦点眼内レンズでは、遠方もしくは近方のいずれかでしかピントが合いません。その他の場所を見るときには眼鏡が必要です。
眼鏡をかけたり外したりするのが煩わしい方は、多焦点レンズを入れることもできます。
多焦点レンズでは遠くと近く、もしくは遠くから中間距離にかけてピントが合うため、眼鏡をかけたり外したりする手間を少なくできます。
多焦点レンズは自由診療です。
- 単焦点眼内レンズの場合……保険診療
- 多焦点眼内レンズの場合……自由診療・選定療養
| 手術+レンズ代 | 診察・検査・お薬など | |
|---|---|---|
| 保険診療(単焦点) | 保険 | 保険 |
| 自由診療(多焦点) | 自己負担 | 手術代含む(術後6ヶ月検診まで) |
| 選定療養(多焦点) | 手術費用:保険 レンズ代:自己負担 |
保険 |
見え方の違い
-
単焦点レンズ
遠くまたは近くのいずれかにピントが合います。
それ以外の距離にはピントが合わないので、眼鏡をかけないとはっきり見えません。 -
多焦点レンズ(2焦点型)
2焦点型の多焦点レンズでは、遠くと近くの2ヶ所にピントが合います。
それ以外の距離(パソコン画面や料理をする手元など)をはっきり見るには眼鏡が必要です。 -
多焦点レンズ(焦点拡張型)
焦点拡張型の多焦点レンズでは、遠くから中間距離にかけてピントが合います。
それ以外の距離(新聞、読書、スマートフォンなど)をはっきり見るには眼鏡が必要です。 -
多焦点レンズ(3焦点型)
3焦点型の多焦点レンズでは、遠くと近く、そして中間距離にピントが合います。
ただし中間距離(50~200cmくらい)の見え方はやや落ちます。
中間距離をはっきり見るには眼鏡をかけたほうが良いと感じるかもしれません。
多焦点レンズのラインナップ
各多焦点レンズの特徴
クラレオン
パンオプティクス
乱視矯正:○
焦点距離:約40〜80cm
Alcon社(アメリカ)から発売された3焦点眼内レンズです。以前より日本でも正式に承認され使用されていたPan Optixレンズの長所を踏まえつつ、さらに新素材を採用して長期的透明性を実現しています。
2022年4月より一般販売開始されました。
このクラレオンパンオプティクスではENLIGHTENテクノロジーを使用し、遠くの視力を犠牲にすることなく近方から中間(40〜80cm)に連続してピントが合う構造を実現。従来の多焦点レンズよりも眼鏡を使う頻度を少なくすることができるのが強みです。
さらに瞳孔径3.0mmという状況下でも光エネルギー利用率は88%と高い水準を維持。どの距離を見る際にも良好なコントラスト感度で鮮明な視覚の質を提供できます。
またレンズには瞳孔径の依存が少ない4.5mm回折ゾーンを採用しており、薄暗い場所でも見え方に影響がでにくい構造となっています。
乱視用のレンズの場合は軸が回転しにくいデザインを採用しているため、質の高い乱視矯正を実現しています。
このように従来より快適な見え方を提供できるため、例えば毎朝新聞を読んで情報収集し、日中はパソコンで仕事、休日にはスポーツや旅行を楽しむようなアクティブな方にもお勧めできる多焦点レンズです。
ミニウェル
(※)
乱視矯正:○
近見の焦点距離:約60~70cm
イタリアのSIFI MedTech社が販売する多焦点眼内レンズです。
レンズ上に3層の同心円状の構造を設けることで、遠方から近方までスムーズに見ることができます。
ミニウェルには2種類あり、遠くから中間が得意なMini WELLと、より近方が見えるMini WELL PROXAというレンズがあります。
片眼にMini WELL、反対の眼にMini WELL PROXAを入れることで、遠くから近くまでより見えやすく、眼鏡を使う頻度を減らせる設計になっています。
また球面収差を利用した構造で、ハローやグレアを抑えたクリアな視界を提供できるのもミニウェルの特長です。
特に夜間の運転時には、他の多焦点眼内レンズよりもすっきりして見やすく感じられるとされています。
ファインビジョン
(※)
乱視矯正:○
近見の焦点距離:約30cm
BVI社(アメリカ)製の3焦点眼内レンズ(トリフォーカルレンズ)です。
遠方と近方はもちろん、中間距離にもピントが合うように設計されています。
このファインビジョンは3焦点型の多焦点レンズで、アポタイズド回折とバイフォーカル(2重焦点)というふたつの技術が組み合わされています。
どのような状況下でも瞳孔の動きにあわせて光の入り方が自然と最適化されまるように設計されており、焦点を3か所と増やしても光エネルギーのロスを抑えることができます。
遠方、近方そして中間距離のいずれを見るときにもベストな視力を出すことができるので、いままで眼鏡をかけることがあまりなく、眼鏡をかけたり外したりするのが煩わしいという方に向いているでしょう。
ピュアシー
乱視矯正:あり
近見の焦点距離:約50~70cm(焦点深度拡張)
TECNIS PureSeeは、Johnson & Johnson社が開発した非回折・屈折型のEDOF(焦点深度拡張)眼内レンズです。
従来、多焦点レンズは、遠く・中間・近くを見るためにレンズ内に複数のゾーンを持たせる設計が一般的でした。
しかし、ピュアシーはこの「ゾーン」を設けず、レンズ後面の中心部にかけてなだらかに屈折力を変化させる独自の設計を採用しています。これにより、遠くから中間にかけてスムーズにつながった見え方を実現し、夜間の光のにじみ(グレア・ハロー)も単焦点レンズ並みに抑えられます。
また、術後にわずかに度数がずれた場合でも視力の落ち込みが少なく、患者様の満足度が高いことも報告されています。
さらに、瞳孔の大きさが変化してもコントラストが安定しており、明るい場所・暗い場所いずれにおいても自然でクリアな見え方が期待されます。
レンティス
(※)
乱視矯正:○
近見の焦点距離:約30~50cm
ドイツのoculentis社が開発した多焦点眼内レンズです。
完全オーダーメイド製で、手術を受ける方の度数に合わせて0.01D単位での調整が可能です。強い乱視にも対応しています。
レンズはプレート型で全長11mm、その中央に直径6mmの光学部分があります。
この光学部分の上方が球面・非対称の構造をもつ遠用部分、下方が扇状の構造を持つ近用部分となっている、セクター型と呼ばれる多焦点眼内レンズです。遠用部と近用部に境目がないため光のロスが少なく、他の多焦点レンズに比べてコントラスト感度が低下しにくいといった特徴があります。
また、他の多焦点レンズと比べてハローやグレアも生じにくくなっています。
レンティスシリーズにはいくつもの種類があり、遠方の見え方が得意なもの、遠方と近方の見え方が比較的得意なもの、遠方はまあまあだが中間や近方の見え方が得意なものなど、幅広いラインナップが揃っています。
レンティスをご希望される場合は、その患者さんの眼の状態を考慮したアドバイスはもちろん、ライフスタイルや見え方のご要望なども聞き取りながら、最も適したレンズを医師がご提案させていただきます。
Intensity
(※)
乱視矯正:〇
近見の焦点距離:40cm
イスラエルのHanita Lenses社が製造する5焦点眼内レンズです。
特許のアルゴリズムによるDLU(Dynamic Light Utilization)を採用。従来の回折型2焦点や3焦点眼内レンズでは使用できなかった部分を使用可能とした独自のテクノロジーで、12本のなめらかな回折による5焦点を実現。ハロー、グレアも最小限に抑えられています。
遠方、遠中、中間、近中、近方と広い範囲にピントが合う設計となっており、途中で視力が落ち込むことなく、遠方から手元40cmの距離までスムーズで連続した見え方を実現。
また光効率を最大化し、瞳孔径ごとの光エネルギー配分も最適化しているため、コントラストが高く明るい見え方となり、暗い場所でも近くが見えやすいでしょう。
近くは40cmの距離にピントが合う設計のため、細かい文字を読んだりスマートフォンを使う場合は老眼鏡をかけたほうが見やすいかもしれません。
クラレオン ビビティ
乱視矯正:あり
近見の焦点距離:約50~70cm(焦点深度拡張)
Alcon社が販売する焦点深度拡張型レンズです。
日本では2023年に厚生省の認可を得ましたが、アメリカでは2020年から販売・使用されています。
また、X-WAVEテクノロジーという独自技術を用いた設計で、光学的ロスがほとんどない構造を実現。
遠方から中間距離の見え方を連続的に改善することができるため、他の多焦点レンズよりも自然な見え方に近い生活が期待できます。
遠く(標識、信号、テレビなど)や中間距離(車のメーターやナビ、パソコン画面、調理中の手元など)、さらに近方(レストランのメニューなど)も、ある程度は裸眼で見ることができると言われています。(新聞や本、スマートフォンなどの細かい文字を読む際は眼鏡が必要です)
コントラスト感度も単焦点レンズと同等程度と言われており、くっきりとした見え方が期待できます。
ハロー、グレアも最小限に抑えられているため、夜間の光のぎらつきなども少なく、夜間の運転をされる方などにも便利なレンズといえるでしょう。
ギャラクシー
乱視矯正:あり
近見の焦点距離:約40cm
RayOne社が開発した「ギャラクシー(Galaxy)」は、世界で初めてスパイラル構造を採用した多焦点眼内レンズです。このレンズはAIを活用して設計されており、光学的ロスを抑える独自の技術で、遠方から近方までスムーズで自然な視界を目指します。
スパイラル光学部を搭載したギャラクシーは、遠方から近方までの視力を補正する設計が特徴です。臨床データによれば、+0.5~-2.5Dの範囲で安定した視力が得られ、幅広い距離で視覚的なサポートが期待されています。また、ハローやグレアが少ないことが確認されており、夜間の見え方にも配慮されています。
さらに、乱視用のトーリックレンズもあり、角膜乱視を矯正することで、患者さんそれぞれの視力の改善に対応できます。「アンチボールティングテクノロジー」を用いた安定性に優れたデザインにより、術後の眼内レンズの偏位や回転が最小限に抑えられると報告されています。
オデッセイ
乱視矯正:あり
近見の焦点距離:約40cm
TECNIS Odysseyは、Johnson & Johnson社が開発した多焦点眼内レンズ(IOL)です。海外では”Full Visual Range IOL”に分類される、新しい連続焦点眼内レンズです。
このレンズは、FreeformテクノロジーとHigh resolutionレースカットという技術を利用し製造されています。レンズの表面を精密に設計することで、遠方から近方まで連続的範囲で視力を維持します。中間でも視力の落ち込みが少なく、自然な見え方が期待されます。術後1か月のデータで、92%以上の患者が眼鏡不要という報告があります。
また残余屈折の誤差にも高い耐性を持ち、狙った度数からズレて誤差が生じてしまった場合も視力には影響が出にくいというデータが出ています。
さらに、TECNIS Odysseyは夜間光視症(グレア・ハロー)の発生を軽減、コントラスト感度も低下しにくく、薄暗い環境でもクリアな視界を期待できます。
(※)このタイプの多焦点レンズはご用意するのに1カ月程度のお時間をいただいています。
術後の度数調整
白内障手術の際には、事前に詳細な検査を行い、度数や眼の状態を正確に測定しています。
どの多焦点眼内レンズを選ぶかは、その検査データおよび患者さんのご希望を考慮して、医師と視能訓練士からご提案させていただきます。
眼内レンズには、様々な度数に対応できるようなラインナップが用意されています。しかし、ほとんどの眼内レンズは既製品のため、患者さんお一人お一人の眼の状態からわずかにズレてしまうことがあります。
また、手術後すぐは期待したとおりの度数になっていても、時間が経つと眼の状態が変化し、近視や乱視が生じることがあります。
見え方の欲求は人それぞれです。多少、度数が変わっても気にならない方もいれば、補助的に眼鏡を使われる方もいます。
望月眼科では、裸眼での見え方を重視される方には、手術後にレーザー治療で度数を微調整し、裸眼視力を向上させることもあります。
多焦点レンズについてのよくある質問
遠くも近くも見えるということは若いときのような見え方ですか?
残念ながらそうではありません。若いときの見え方は、遠くも近くも中間も、全てのところがはっきり見えている状態です。それに対して多焦点眼内レンズは、レンズの種類によって遠くと近くの2カ所、もしくは遠くと中間と近くの3か所、あるいは遠くから中間距離にピントが合いますが、全ての距離が裸眼で鮮明に見えるようになるわけではありません。
事前の期待が大きいと期待はずれになってしまうおそれがあります。手術前には医師とよくご相談され、慎重に決めてください。
すぐには慣れないことがあると聞きましたが。
手術翌日からよく見えるという方もいれば2、3ヶ月してやっと慣れてきて見えるようになってくる方もいます。個人差がありますので一概には言えませんが、手術後にすっきりしなくても焦らずに慣れていくのを待つと良いでしょう。
遠くも近くも見えるようになる他の方法はないのですか?
通常のピントが1カ所にしか合わない眼内レンズ(単焦点眼内レンズ)で通常よりも少し手前にピントを合わせる方法や、効き目を遠くに、もう片方を近くに合わせるモノビジョンという方法もあります。これもメリット・デメリットがありますので、詳しくは医師にご相談ください。
多焦点眼内レンズを入れてどうしても慣れない場合はどうするのですか?
だいたい3ヶ月は慣れるのを待ちます。どうしても慣れず何とかしたい、というときはやむを得ず眼内レンズの摘出を行い、通常の単焦点眼内レンズを入れ直します。しかし、これはリスクを伴うためあまりおすすめしません。

