【白内障手術 症例1】70代 /多焦点レンズ: テクニス シンフォニー

最近バイクの運転がしづらくなったとご来院された患者様です。初診時、裸眼視力(右0.2、左0.3)、矯正視力(右1.0、左1.2)ということで、矯正視力はさほど低下しておらず、ご自身のメガネを使うと両眼0.8でした。また+3.0Dの遠視もあり、メガネがないと近くも遠くもぼんやりとしか見えない状態です。

この場合、メガネの度数調整で見え方が改善します。それを患者様に説明したところ、以下のご希望を頂きました。

  • バイクに乗るときヘルメットを被るので、メガネが邪魔になっている
  • マスクでメガネが曇るので裸眼で運転したい
  • なるべく老眼鏡をかけたくない

これらのご希望を叶えるため、白内障手術を提案し、レンズの選定に入りました。

スリットランプ検査-左目(術前)
スリットランプ検査-右目(術前)

ご希望は、選定療養の範囲内(※)の多焦点レンズ。術後は、どちらかというとバイクの運転を重要視したいということでしたので、中間距離~遠方が見やすい焦点深度拡張型レンズ・シンフォニーを勧めさせていただきました。

※選定療養…追加費用を負担することで、保険適応の治療と保険適応外の治療を併せて受けることができる制度

シンフォニーは夜間のライトがギラついて見えることがあります。ただ、この方は夜間ほとんど運転されないということで、問題なくこのレンズに決まりました。

術後の目標屈折度については、右眼はバイクの運転を考慮し遠方に、左眼はなるべく老眼鏡をかけなくて済むようにやや近方に設定。意図的に少し左右差をつけるマイクロモノビジョン法を提案し、まず右眼から手術を行う予定としました。

右眼の裸眼視力

術前術後
遠見0.21.5
近見0.050.6

患者さんの術後感想(右眼)

遠くは良く見える。近くは術前より見えるが、もう少し見えると便利に感じる。

右眼の手術後、術後屈折度と視力が予測通りであったため、左眼は予定通りのやや近方よりの目標屈折度で手術を行いました。

左眼の裸眼視力

術後術後
遠見0.031.0
近見0.070.9

患者さんの術後感想(左眼)

遠くは右眼の方が見えるが、近くは左眼の方が良く見える。両眼で見ると、近くも遠くも良く見える

総評

今回選んだレンズはJohnson&Johnson社のテクニスシリーズの商品、シンフォニーです。

シンフォニーは、加入度数が+1.5Dのため、理論上、近方約60cmでピントが合うように設計されています。そのため、遠方~中間距離までクリアに見えますが、近方は見え方がやや弱いと感じる方も出てきます。しかし、もともと遠視の方の場合、低加入度数のシンフォニーでも近方が見えるとおっしゃる方もいます。また、目標屈折度を少し近視側にずらすことで、遠方はやや見えにくくなりますが近くは見えやすくなります。

今回のケースでは、利き目である右眼は遠方重視の度数にし、反対眼の左眼は少しだけ近方寄りの度数にする、マイクロモノビジョン法を採用しました。

モノビジョン法は、意図的に屈折の左右差をつける方法です。ピントの位置を片眼は遠方、もう片眼は近方に合わせることにより、メガネの使用頻度を減らすことができます。

そしてマイクロモノビジョン法は、モノビジョン法よりも屈折度の左右差が少ないため、モノビジョン法のデメリットである違和感や、疲れ目、立体視低下などが軽減されます。全ての多焦点レンズでこの方法が推奨できるわけではありませんが、シンフォニーというレンズは比較的この方法と相性が良いと個人的には考えています。

このように、当院では患者様のご希望や左右の目の状態、日常生活まで幅広く状況を把握し、最適な提案を行っております。